2018年09月26日
道を間違えたら巨大な雲が・・・

道を間違えたようだった。そのまま進むと防波堤の上空に
低く横たわる巨大な雲が目に飛び込んできた。
防波堤前には白い廃船。絵になる光景だった。立った姿勢
や低いアングルからシャッターを押した。何枚か撮ったが、
最初にこの雲を見た車の座席と同じ場所・同じ位置からの
構図がもっとも良かった。
ツバメが飛んでいる。数分ごとに周回して廃船の上空に
やってくる。
さっと素早く横切っていく小さなツバメは、カメラを覗いた
状態ではほとんど分からない。カメラから目を離しツバメ
がやってくるタイミングを確認してカメラを構え、それらしき
影が見えたときシャッターを押した。2枚にツバメが映って
いた。
ここら辺りは、年中沖縄にいるリュキュウツバメを見かける。
写真に写ったツバメは、首の方の色はよく分からないが尾
が長い。越冬で本土から渡ってきたツバメだろう。しばらく
沖縄で過ごし南の国へ旅立つ。季節を感じさせる鳥だ。

雲のダイナミックさが出せないか、広角レンズに変えてみた。

広角レンズでは変化をつけた構図を楽しめた。しかし、見た
目の雲の高さや巨大さの印象が失われた。低すぎると船の
イメージもつかめなくなった。広角レンズをときどき使うが、
まだうまく使いこなせない。
車がやってきた。近くの工場の従業員だろうか。集落を離
れた車道で立ったりしゃがんだりしていると不審者に思わ
れる。雲が素晴らしいので写真を撮っていると話しカメラを
見せ軽く挨拶をする。
面倒で顔の髭を何日か伸ばしていると鏡の中には不審者
がいる。久しぶりに会った昔の同僚は「確かに不審者みた
い」と髭と服装を見ながら笑う。


雲の全貌を見ようと堤防に上がった。斜め下からの形状が
ロールパンのような雲が中城湾上空をはるか遠くまで横た
わっている。これから積乱雲に発達していく積雲の雄大積
雲。
水平線上には雲底に降雨の暗い灰色の壁が見えた。
この降雨は「降水雲」というようだ。この写真の場合は「雄
大積雲の降水雲」となるという。雲と称するにはどうかな
あと素人としては思いもある・・・。

東の空に雄大雲や積乱雲が多い日だった。
夕方、与那原・佐敷の沖から陸地にかけて「積乱雲の降
水雲」が見られた。
海に囲まれた沖縄。雄大積雲や積乱雲が出現していると
きは水平線上に降水雲を見かけることが少なくない。
ついでに昨年撮った降水雲を次ぎに載せる。

残波岬灯台と雄大積雲の降水雲。降雨の柱が洋上をゆっく
りと移動していた。昨年の夏に撮影。
(余談)
4~5年ほど前、糸満市喜屋武岬で崖下にカメラを向けて
いる方に出会った。トンボを撮っているという。カメラの向く
方を見ると崖に沿って海から吹き上がる風に乗って無数の
トンボが舞っていた。
その方は降水雲が撮りたいがあいにく現われていないと、
残念がり洋上を眺めていた。人さまざま。人はいろいろな
ものに夢中になるものだと思いながら、そのときは聞き流
していた・・・。
雲の撮影が好きなようで、竜の子が3匹並んで飛んでいる
情景の雲を東京で撮ったとその写真を見せてくれた。
高知県出身でジョン万次郎についても詳しく、万次郎が上
陸した大渡海岸に記念碑を設置しようと糸満市に働きかけ
ていると熱心に語っていた。
話がだいぶそれた。
いつまでも消滅せずに高い積乱雲が多い日だったので
(積乱雲は頭頂が13kmの高さになることもあるという)、
東海岸なら夕焼け雲が撮れるだろうと泡瀬の県総合運
動公園に行った。

県総合運動公園海岸沖のいるか島。この島は朝日や夕陽
を受けると赤く映える。写真に撮るとその色が出る。
上空には巨大な積乱雲。
公園の警備員の方が、この島をライオンに似ているという
人がいたと話す。象さんが後ろ向きで座っているという少
年がいたのを思い出したので、後ろ姿かと尋ねたらそうだ
という返事だった。
引き潮のときにライオンが後ろ向きで座っている姿に見え、
頭はどこで、足はどこだと具体的に説明する。
人は欠けた部分を脳が想像で補う。引き潮のときに見たら
ライオンの座像に見えてきた。眺めていた位置は警備員の
ボックス前。

いるか島と積乱雲の高い嶺が夕焼けに染まるのを待った。
雄大雲や積乱雲の発生している空は、日の高い昼間とは
違っていた。

夕焼けに染まる。
2才ほどの子どもを連れた女性が砂浜の波打ち際まで
やってきてスマートフォン(コンパクトカメラ?)でこの空
のドラマを撮っていた。

夕焼けた巨大な積乱雲は頭上を北から南に形を崩しなが
ら流れていく。雲底を遠くまで続く堤のような壁はアーチ雲
だろうか。

わたしは大地と水の娘
空のいとし子
大洋と海岸の細穴をくぐり抜け
わたしは変化するが、死にはしない
雨のあとに、穢れひとつない
天の宮殿が現われ
風と日光がそのレンズを光らせて
青い天蓋(てんがい)をきずくとき
わたしはしずかにわたしの墓碑を笑い
子宮を飛び出す嬰児のように、墓から
さまよいだす亡霊のように
雨の洞窟を出て
ふたたび立ちあがり、蒼穹(そうきゅう)
を打ち砕く
ーーー詩:シェリー「雲」(抄)
詩はギャヴィン・プレイター=ピニーの『雲の楽しみ方』か
らの孫引き。桃井綠美子の訳(河出書房社、2007)になる。
新潮文庫の『シェリー詩集』(上田和夫訳)にはこの詩の全
体が載っているが、桃井訳が日本語の詩として良かった。

夕方、逆光となった雲の縁に虹のように美しく輝く彩雲
(さいうん)を見つけた。
彩雲は、紫雲、瑞雲、景雲、慶雲と呼ばれ、めでたいこと
がおこる前兆の雲と古代からいわれるという。空を眺め
てせっかくの吉兆を逃さないようにしよう。
彩雲の英語名はIreidescent clouds(イリデセント
クラウズ)。ギリシャ神話のイリス(虹の女神)に由来す
る名。
イリスはギリシャ神話の全知全能神ゼウスの妻ヘラか
らのメッセージを、地上の人間に伝える女神。絵画では
背に翼を持った姿で描かれるという。英語でも空からの
便りをもたらす雲なのだ。
瑞雲をたびたび見るよき秋かな