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2016年11月07日

ツノメガニ

                              カニの海水浴? 

    うるま市浜比嘉島の午前6時過ぎ頃。海岸で朝日を撮っていると、カニが横に現れた。
    海に向かってしばらく立ち止まって朝日を見ていた(ように思えた)。
  
    やがて、とっとっと海に向かって寄っていく。波が打ち寄せ足下を洗うがそのまま突っ立
    ていた。波が去った後の姿勢は、流されないように砂を掘って体を埋めていた。

    調べたらこのカニはスナガニ科スナガニ属のツノメガニ(英語の呼び名はゴースト・
    クラブ)という名だった。
      
 


ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ

     この浜比嘉島で見たツノメガニは、背中の方が見えなかったため、幼い頃によく
     掴まえて遊んだカニと同じカニだとは思わなかった。
  

     ところで、何故、波に向かって行くのか。このことについて、
     インターネット(『AMCO海の生き物を守る会~今月の海の生き物~』中の「うみひるも
      NO101」には「鰓に海水を受け、酸素を補給する」のだと説明されている。

     五木寛之の訳したブルック・ニューマンのアジサシ物語『リトル ターン』(これは文芸書
     であるが)を読むと、アジサシのリトルターンが出会ったゴースト・クラブについて、次の
     ような下りがある。 

          「ゴースト・クラブは、砂に深い穴を掘って、その中で暮らしていた。
          数時間おきに彼は、ねぐらから飛びでて幅広い海岸を横切り、いち
          ばん高い海岸線へとむかう。

          そして波打ち際に横向きになり、砂をつかんで彼が完全に体をあら
          うのを待つ。そうして波から食事と飲みものを集めると、彼は砂丘
          の麓にあるねぐらへと小走りで急いでもどっていくのである。」


      波向かっていくのは、生きるために必要なものを得るためで海水浴ではないのだ。

     
      『沈黙の春』のレイチェル・カーソン は『センス・オブ・ワンダー』の中で、
      「大洋の荒々しい力に、たった1ぴきで立ち向かっていく小さなかよわい」
      ゴースト・クラブの姿に「哲学的なものすら感じる」という。 

      ツノメガニことゴースト・クラブが好きになりそうだ。   

     



     ツノメガニの穴掘りと喧嘩

     豊見城市の海岸。午前11時頃。ツノメガニが一生懸命穴から砂を運び出していた。
     その途中に、別のカニが穴に入ろうとして喧嘩になった。
     喧嘩が終わると再び砂を運んでいた。
         

ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ

    喧嘩が終わり、再び穴の砂出し。働き者だ。それも穴から遠い場所まで運んでいる。
    カニの砂の出し方にも個性があるようだ。


ツノメガニ



ツノメガニ


ツノメガニ



    
      子供の頃、ツノメガニを掴まえて遊んだ(数日前まで、名前を知らなかった)。
      穴を掘ってカニを掴まえ、そのカニの足にヒモを付け、もう一つのカニの穴にヒモを
      付けたカニを入れる。

      ヒモでくくられたカニは穴の中で家主のカニと喧嘩する。ヒモを引っ張り、喧嘩で足
      の絡まった二つのカニを穴から引きずり出しゲットする。

      ツノメガニの穴は深い。子供の腕の長さほどで穴の口が肩までくるほどであった。
      穴を掘って掴まえるときにカニにハサミで指を挟まれることもある。
      泥に汚れた川のカニと違って、珊瑚の砂浜のツノメガニは清潔に思えた。
      



             


     伊計島のツノメガニの子?


     伊計島の「東の浜」の砂浜には、満潮時の波打ち際に大小無数のカニの穴がある。
     午前9時頃、2~3匹の小さなカニが引き潮になった砂浜を波に向かって走って行くのが
     見えた。近寄って探したがどこに行ったのか分からなかった。
     
     カニは夜行性だという(巣穴の陸側の方には夜間に歩き回った足跡が多くある)が、
     昼、穴を出て動いているのも見れる。

    
ツノメガニ

    海藻の打ち寄せられている付近にカニたちの巣穴がある。


ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ


ツノメガニ

      波で寄せられた砂で埋もれた穴。カニには中の砂を運び出す仕事が待っている。



ツノメガニ
       
     巣穴を出て夜間歩き回った足跡が巣穴の方から続いていた。




     先ほどのカニたちとはちがう別の1匹の小さなカニが波に向かって走っていくのが見えた。
     波にさらわれたように見えたが、注意してみると、波の引いた砂の中に体を埋めていた。
     背中を突っつくと、陸の穴のほうでなく一目散に海の中に逃げて見えなくなった。
    
     素早いため、はっきりとは分からなかったがツノはないように見えた。
     どこに消えたのかしばらく待ったが現れてこなかった。

      

ツノメガニ



ツノメガニ



ツノメガニ





          下の写真は、別の日に穴の近くにいたカニ。近づくとあっという間に穴に隠れた。穴は
     まだ埋もれていたのか入り口の砂に身を沈めて目を立てて窺っていた。隠れたつもり
     なのだろう。触れると、素早く穴を出て走り5メートル先の海の中に逃げた。
     
     海の中が一番の安全地帯のようだ。


ツノメガニ




    海岸では野鳥が一日中餌を探している。その見つめる先や動きがカニをねらってい
    るように見えた。
    カニが波打ち際に走って行くのは野鳥などの敵から逃れるためだろうか。

    
ツノメガニ



ツノメガニ





       穴の近くで、じっとしているカニがいた。近づいても逃げないので、そろりそろりと
       カメラを寄せ30センチほど近くで撮る事ができた。
       ツノらしきものは見えない。ツノメガニとは違うスナガニ科の他の種類なのか、それ
       ともツノメガニの子どもなのか。


       先にみた『AMCO 海の生き物を守る会』のページ(「うみひるも N0102」)には、
       ツノメガニの未成体について、和田恵次さんという甲殻類の専門家の説明が掲載
       されていて答えになる。

            「ツノメガニは、成体の角状突起があることでその和名が付いて
            いるが、未成体にはこの突起はなく、他の種と見間違えることが
            多い。(略)
           
            ツノメガニの未成体と間違われやすいスナガニは、(略)琉球列島
            からは記録がない」

       これからすると、写真のカニはツノメガニの子どもと考えてよいだろう。      



ツノメガニ



ツノメガニ





     昼、ツノメガニを見かけることはほとんどない。 
     しかし、なんとか見つけたい。そんな時は浜辺を歩きながらツノメガニ
     の穴を覗き見してみるといい。
 
     20、30と覗いても見つけることもできないかも知れない。たいていは
     そうだ。人生と同じ。それもいい、どうせ時間つぶしもあったのだから。
     沖に起つ白波の花を眺めながらそのまま波打ち際の散歩を続ければ
     いい。    



     
ツノメガニ

  
     足が見える。
     気配には敏感。砂音や影で気付かれて穴の中深く逃げ込まれて
     しまう。慎重にそっと近寄りしゃがみこむ。
     


     ・・・・この時点で暗い穴の中に逃げ込まれてしまうこともある。
     しかし、一度見つけると嬉しい。ひょっとしたらまた見つけることが
     できるかもと思う。


 

ツノメガニ
             

     しゃがみこんだら手頃な小さな細い枝や茎などを穴のなかに
     差し入れ、大きなハサミの側をカニを傷つけないようゆっくり
     抜き差ししてカニに挟ませるようにする。


     3~4回の試みで反応がないなら諦めよう。もう穴にもぐりこ
     んでいる。やっきになって強く何度突つかない。カニを傷つけ
     てしまうかも知れない。
     



ツノメガニ


     差し込んだ枝をカニがはさんだ手応えを感じたら、枝を引くと、
     カニも一緒に引きずられるように穴から飛びだしてくる(運がよ
     ければ)。 

     カニは素早い。ゴースト・クラブという名のとおり、一瞬で海のな
     かに逃げられてしまう。すぐにつかまよう。そして観察したあと
     は放す。


     カニも地球の生き物。人間の仲間。虐待しないようにしよう。


     運がなければ、穴深く逃げ込まれてしまう。穴の深さは50~60
     センチ以上にもなるだろうか。穴を掘っても掘っても逃げきられる。
     芋ほり体験のようには行かない。カニの勝利。

    


ツノメガニ


 伊計島東海岸の砂浜は静かで美しい。
    ツノメガニの穴も多く見られる。たびたび訪れていれば、
    いつの日にかツノメガニに出合う日が来るだろう。


 

ツノメガニ


    ふと、思った。
   
    ツノメガニになったらどんな気持ちだろう。波打ち際の
    砂浜の穴の中で聞く波音はどんな音なのだろう。
       



   
     幽霊ガニ

     スナガニの総称を英語ではゴースト・クラブと呼ぶようだ。沖縄市立図書館に
     カニの本を借りに行ったがなかった。


     幽霊ガニの名の由来についてインターネットで調べた( 「ウィキペディア」)。

      (1) 「足が速いため影を残して走り去る」ということから
      (2) 「素早く巣穴に隠れるため『さっきまで居たはずなのにもう居ない』ことから
        (3)「保護色で砂の色に紛れ込むため、夜の砂浜で照明を当てると『影だけが
          動いている』ように見えることから

    この3つの理由が言われているがはっきりしないようだ。

    (3)の影については、同じくインターネット(『AMCO 海の生き物を守る会~今月の海
    の生き物~』)で向井宏氏撮影のスナガニ(ツノメガニの未成体)の写真の影を見たら
    なるほどと思った。背中も砂の色だ。

    しかし、昼間にツノメガニを見た場合は(1)や(2)にも頷けるものがある。
    どれが由来だと特定する必要はないと思う。私自身としては(2)が経験的に実感とし
    て頷ける。
     
     

    
  

 



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Posted by 流れる雲 at 13:12│Comments(0)海辺の生き物
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