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2018年11月19日

ツノメガニ(2)

ツノメガニ(2)




 名護市瀨嵩の海岸。砂浜を波打ち際沿いに散策する。



ツノメガニ(2)


 野菜の切れ端にヤドカリが群がっていた。
 砂浜ではこういうことはときどき見かける。群がっているもの
 は魚の死骸や、時には子亀の死骸などであったりする。 


 近寄ると気配を感ずかれ四方八方に逃げる。ピタッと蓋を
 閉じその場でじっと動かないヤドカリもいる。



   やどかりの中をやどかり走り抜け  (波多野爽波(そうは))
    



ツノメガニ(2)


 少し離れたところにもヤドカリが数匹群がっていた。ここもごそ 
 ごそと逃げ始めた。 



ツノメガニ(2)


 逃げていく一匹をカメラで追う。 
 人の気配には敏感だ。直ぐに向きを変え背負った貝殻の家
 の屋根に隠れ頭の方は見えなくなる。その正面にまわると、
 また向きを変える。あるいは蓋を閉じて動かなくなる。


 しばらく待っ。そろりそろりと頭を出し、また動き出す。
 これを繰り返すので根負けする。




 ヤドカリを詠んだ正岡子規の句がある。
 
 
    やどかりの家をふりすてゝ逃げにけり     
 

 次のような句もある。


    寄居虫(やどかり)という境遇のありたけり  (清崎敏郎)
  

 ヤドカリにすれば勝手に詠んでおれ!と言いたいかも・・・。 




ツノメガニ(2)


 先ほどのヤドカリと二枚貝の殻の中の逃げ残ったヤドカリ。
 なにやら話をしているように見える。


 「おい、あの奇妙な人間はもう去ったかなあ?」


 などとひそひそ話でもしているのだろうか。物語を作りたくな
 る情景だ。

 
 それにしても右側のヤドカリ。背負った淡いピンクの貝殻が
 なかなか似合う。いい家だ。さぞかし他のヤドカリに奪い取
 られないよう気を使う日々だろう。



 
ツノメガニ(2)


 ヤドカリを撮るにはヤドカリの目線になって撮るので、砂浜
 に腹ばいになる。腹ばいになって両腕の肘でヤドカリの動き
 に合わせて匍う。匍匐前進あるいは後退の戦場だ。他人に
 は妙な光景に見えるだろう。


 しばらくヤドカリを撮っていたら声が聞えた。見上げると男性
 が立っていた。手に蟹を一匹持っている。


 ツノメガニだった。ツノメガニを昼の砂浜で見かけることはあ
 まりない。見つけても素早く逃げられてしまう。幽霊ガニの
 別名もある。穴を掘ってつかまえたのかと思い、訊ねると砂
 の上にいたとその蟹をどうぞというふうに私に差し出した。


 嬉しかった。お礼をいい、早速砂浜にツノメガニをゆっくりと
 放した。おとなしい。逃げることなく砂の上でじっとしている。
 



ツノメガニ(2)


 撮った写真て気付いたが右目の上の角のようなものが左より
 短い。喧嘩で切り取られたのだろうか?元気がなかったのは
 これが原因かも知れない。僅かに動くだけで、鋭いハサミを持
 ち上げ威嚇することもまったくなかった。  




ツノメガニ(2)


 上から背中が見えるように撮った。
 あしは十脚。はさみ脚は右と左では大きさがちがう。右が大きい。
 




ツノメガニ(2)

  
 今度は背中全体を撮る。背中の紋様が般若の面のようだ。
 

 ツノメガニを手につかみ背中を見るのは子どもの頃以来になる。
 離島で生まれ育った。海と山そして田圃に川、学校唱歌の詩の
 世界だった。ツノメガニは、砂浜で穴を掘ってよく捕えた。なつか
 しい背中だ。


 余談になるが、砂浜では穴を掘って亀の卵も採った。亀の卵は
 ピンポン球とまったく似ている。亀はよく浜に上陸し卵を産んだ。
 ツノメガニは遊ぶために捕獲し、亀の卵は黄みを呑んだ。




ツノメガニ(2)


 波打ち際に放した。




ツノメガニ(2)


 じっとして動かない。  




ツノメガニ(2)


 海の中が安全なのでそのままにした。波が寄せ覆い被さる。




 部落内から正午を告げるマイクの音声が流れてくる。


 ツノメガニを海に放ち帰ろうとしたら、年配の男性が打ち寄せ
 られた砂礫の上にしゃがんでいた。仕事で青森から来沖。国
 頭で通いの仕事をしての帰り。明日青森に帰るので沖縄の
 記念に貝殻を拾っているという。


 リンゴの話をする男性の手から貝殻が溢れそうだった。貝殻
 や気に入った小石を入れるため、バックに持っていたコンビ
 ニのビニール袋をさしあげた。



 砂浜には先ほどのツノメガニの男性もまだいた。那覇から来
 たという。連れの女性が波打ち際を歩きながら貝殻を探して
 いるようだった。男性とツノメガニの話を少ししてお礼を言って
 別れた。






 ツノメガニは早朝の波打ち際で撮ることができる。波打ち際
 で波がひき返すとき、さあっと海に向かって素早く走ってい
 く影がツノメガニ。波打ち際に注意を集中していないと見逃す。


 次からのツノメガニの写真は浜比嘉島(ムルク浜)
 撮った。



ツノメガニ(2)



 人の気配には敏感。遠くからだと小さくて撮れないので近寄る。
 近寄ると逃げる。気配を隠し波打ち際に目を凝らし現れるのを
 待つ。めったに現れない。

 根負けする。別の場所に波打ち際を歩きながら素早い影の動
 きに目を凝らす。 




ツノメガニ(2)

  
 運よく近くに現れるときがある。・・・まさに運よく。
 それでも3~4メートルほどの距離。砂浜に這いつくばり、肘
 でカメラを支えピントを合わす。小さいのでピント合わせはな
 かなかむつかしい。うっかりするとカニを見失う。

 手持ちのレンズの望遠側でも大きく写すのはむつかしい。うま
 くピントがうまく合っていたら、パソコンで切り取り拡大できる。




ツノメガニ(2)


 幸い同じ場所をあまり動かない。波の引いた辺りにじっとしている。
 もう一匹が現われた。 




ツノメガニ(2)


 カメラのファインダーを覗き蟹の動きにじっとピントを合わせていると、
 三匹目がさらに後方に現われていた。
  



ツノメガニ(2)


 朝の食事か。打ち上げられた海藻を鋏でつかみ口元に運ん
 でいる。よく知らないがカニは雑食だと何かで読んだ。



ツノメガニ(2)


 このツノメガニは別の日に出会った。この日はこの一匹だけが
 撮れた。




ツノメガニ(2)

 波の様子見をし、つつつ・・と海に向かって進むと途中で止まった。




ツノメガニ(2)

  
 押し寄せた波が被さり退いたあとに姿が見えた。流されない
 ですんだようだ。やがて海に入り現れなくなった。   



ツノメガニ(2)


 近くにヤドカリ。触角を前に動かしながら朝日を浴びて歩いている。
 カメラを向けてしばらく追う。  




ツノメガニ(2)


 美しい渚の朝の詩・・・・という言葉が浮んでくる。




ツノメガニ(2)

 
 ヤドカリには一対の第一触角と同じく一対の第二触角が
 あり、常に動かし匂いをかぎ餌のありかを探すのは第一
 触角(目の内側についている)で、触れて物を感じる役目
 の器官が第二触角(目の外側についていて、長い)という。


 あしは十本。一対はハサミあし。二対の歩脚。貝殻の中
 に二対の小さなあしがあり、この貝殻のなかの足は貝殻
 の中から抜けないように支えているという。


 面白いのはやどかりの引っ越し。背負っている家(貝殻)
 の交換。先を急ぐので詳細は略。 


 触角やあしのことは図書館で見つけた児童向けのカラーの図
 書に記されていた。引っ越しのことを詳しく観察した図書もあっ
 た。児童向けの科学本は写真も豊富で文字も読みやすく実に
 丁寧だ。


 

ツノメガニ(2)


 別のヤドカリがいた。背負った貝殻の家はあまり魅力的でない。
 1枚撮って終る。


 波打ちぎわの砂礫がある場所を探すとすぐにヤドカリは見つ
 けることができる。ツノメガニより楽だ。




ツノメガニ(2)


 低い目線からヤドカリを追っているとこのような足下の景色
 も見つける。打ち上げられた海藻が朝の光に輝いて美しい。





 ツノメガニそしてヤドカリたちと別れ、砂浜を一人歩きながら
 浮かんでくるのは石川啄木の歌。

   
    東海の小島(こじま)の磯の白砂(しらすな)に
    われ泣きぬれて
    蟹とたはむる


 歌集『一握の砂』の中のよく知られた歌。これをもじり、ああで
 もないこうでもないと歌を口ずさむ。

   
    浜比嘉の白波光る砂浜に
    われカメラ手に
    蟹とたわむる
  


  
 浜比嘉島はいいところだ。朝日もいい。ムルクの浜に打ち寄せる
 波もいい絵になる。




ツノメガニ(2)

 
 ツノメガニは砂浜の奥の方の波打ち際で撮った。



ツノメガニ(2)




ツノメガニ(2)





ツノメガニ(2)





ツノメガニ(2)


 流れ着いた船のブイだろうか。波にゆすられていた。後方で
 海中の岩に波飛沫があがる。ブイもいい位置に流されとど
 まった。

 

ツノメガニ(2)


 9月・10月にはグンバイヒルガオの花も見られる。 





 ムルク浜は島のホテル(ホテル浜比嘉島リゾート)のある丘
 の東側にある砂浜。
 
 砂浜は二カ所あるように思うが、地元のお年寄りは一つの浜
 としてムルク浜と呼んでいるようだった。

 ツノメガニを撮った砂浜は、ホテルを背にして左手の大きな
 砂浜である。朝日撮影のナイススポットでもある。


 

ツノメガニ(2)

    
 ホテル浜比嘉島リゾートを背にして右手にある砂浜。
 ここの方が静かで落ち着く。


 雲が少ないとモクマオウの白い枯木以外には目立つものは
 ない。砂浜を大きく組み入れても単調で面白くない。靴を濡ら
 してしまったので思い切って海のなかに入り膝までつかって
 撮った。

 
 波の部分を大きく画面に入れることができ、実際に目でみて
 いた印象にちかい絵に撮れた。




ツノメガニ(2)

 
 退き返した波が高くもりあがる。シャッターチャンス。シャッタ
 ーは無意識に押していることがあるが、足元は意識していな
 いと強い波にさらわれカメラもろとも海水浴をすることになる。
 不安が横切る。
 


ツノメガニ(2)
 

 波の寄せ具合で印象がかなり変わる。そしてどれも捨て
 がたくなる。
 
  


ツノメガニ(2)


 順光では意図せずに自分の影が写る時がある。ときにそ
 れが構図の一部分としていい絵になっていることがある。
 これは岩の上から撮っている。




ツノメガニ(2)


 白雲があるとモクマオウの枯木を主役にいい絵が描ける。
 海の中に入る必要はない。
 



ツノメガニ(2)

  
 もっとも大きなモクマオウの枯木。少ないが遠くの空を白雲が流れ
 てくる。
 木のどの高さに雲を配置した方がいいのか、立って撮ったりしゃが
 んで撮ったりとアングルを変える。しかし雲はどんどん流れまた消
 えていく。じっくりとはできない。
 



ツノメガニ(2)




ツノメガニ(2)

 モクマオウの影。草の名は分からないが(ムラサキヒゲシバ?)
 光にゆれる穂が美しい。また、アワユキセンダングサの小さな
 白い花が良い具合にアクセントとなっている。
 もう少し白い花があったらなお良かった・・・。



ツノメガニ(2)

  
 縦の構図にして感動したモクマオウの枯木の影を強調。
 これで決まり。
 この場所の朝の光がつくるこの光景はよく撮ってきた。
 ありきたりの単純な光景だが美しく感動する。 



ツノメガニ(2)

 
 一応、周りの様子が分かるように海も取り込んでみた。




ツノメガニ(2)


 ツノメガニを撮った方のムルク浜を道路の上から見下ろす。
 秋らしくススキの穂を前景に撮る。
 正面彼方の岩山はウマヌチラー(馬の顔)と呼ばれる。

 
 朝日の当り方によっては馬の顔になる。馬より牛か犬の顔
 に似て見えるが、ともかく地元ではウマヌチラー(馬の顔)だ。
 浜の昔は馬が生活と密着していたのだろう。
 (→当ブログ「ウマヌゥチラー(馬の顔)」2017,3,11)



 ウマヌチラーの岩山をはさんで二つの砂浜がある。砂浜は
 つながっていてそのまま歩いて往来ができる。




ツノメガニ(2)


 天気予報や早朝の雲の様子を見て行くのだが、朝日が
 撮れない日もある。


 
 ・・・・ 浜比嘉島はいいところだ。




ツノメガニ(2)


 ツノメガニがこんなところに隠れていた。




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Posted by 流れる雲 at 15:50│Comments(0)風景海辺の生き物
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