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2019年05月14日

残波岬のテッポユリ(2)

残波岬のテッポユリ(2)


 海を見下ろし咲いているテッポウユリを撮り
たいと思った。


 あまり見かけなくなったが、テッポウユリは
ひと昔前は海岸沿いの山すそや崖に多く
 自生していた。


 ふる里の遠い記憶のなかのテッポウユリも
そのような風景のなかに白く咲いている。
 眼を閉じると瞼に浮ぶ。


   

残波岬のテッポユリ(2)


 残波岬。
 舗装された散策路を行き進むと、アダンと
 テッポウユリの花越しに海が見える場所が
 ある。


 今年の岬のユリの開花は早かったが、
 ここは散策路周辺より遅咲きのようだ。
 咲いたばかりのようにきれいな花。朽ち
 た花は少ない。


 釣り人たちが踏み固めた細い径を辿って
 みたが草が生い茂り通りぬけることはで
 きない。


 もう少し次の海が見える場所まで散策路
 を進む。




 残波岬の東端 



残波岬のテッポユリ(2)


 先ほどの場所から散策路をごく10mほど
 進むと断崖のある海側に開けた赤土と岩
 が露出した場所がある。ここから断崖の方
 へ下る。
 

 両側はアダン。断崖の淵につづく向こうに
 クサトベラの茂る緩やかな斜面の野が広
 がる。眺望のいい場所。


 ここまでは人はあまり来ない。ごくたまに
 ひょっこりと見かける程度の静かな場所。
 
 
 海に向かって大声で叫んだりうなったり
 あるいは歌ったり。そんな阿呆みたいな
 こともやっていいひとりの場所になる。




残波岬のテッポユリ(2)
 

 テッポウユリが草むらのあちらこちらに立ち
 花を咲かせている。


 青空に碧い海に映えるユリの花をイメージ
 していたが、この日は空も海の色もすっきり
 しない。


 しかし、ユリの花と景色に心も足どりも蝶が
 飛ぶように軽い。
 ついでに言えば懐は家を出る頃からとても
 軽かった。




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 赤土のでこぼこ地を下った左手の風景。


 右奥に二つの人影。
 一つの影は立ってしきりに身体を動かし
 ていた。吹き上げてくる穏やかな潮風に
 身体をあずけ揺らしているように思えた。

 中高生くらいの男子にその母親のようだ。
 男の子がここが好きだから時々来るという。
 
    
     
残波岬のテッポユリ(2)


 さらに東側にアダン葉やクサトベラを分けて
 斜面の小径を進む。東シナ海を見下ろして
 テッポウユリが咲いている。

 思い描いていた好きな風景の中を分け入っ
 て行くのは楽しい。


  ユリの花追って分け入る釣りの道




残波岬のテッポユリ(2)


 ごく小さな範囲にすぎないがふる里の山に
 似た風景があった。懐かしくなる。


  ふる里の山の花なりテッポウユリ



残波岬のテッポユリ(2)


 幾つかのテッポウユリの花に囲まれた
 なかに寝転ぶ。灰色の空。ほのかにユリ
 の香。アゲハ蝶も飛んでいる。 



  ぼんやりと亡き母浮かべテッポウユリ
  

 
 テッポウユリの花が咲く頃は、母は床
 の間の花瓶に毎年数本挿していた。
 香りが部屋に漂い、夜になると蚊たち
 が訪れてきた。


  百合の香やしきりに思う母のこと  


 島での子どもの頃のあれこれの思い
 が浮かんでくる。

 

残波岬のテッポユリ(2)


 街とはちがうもうひとつの静かな時間が
 両の腕を枕にした草むらの小さな空間
 に流れる。


 しばらくカメラのことを忘れる。頭の上の
 ユリの花陰にリュウキュウコスミレの小
 さな花が一輪咲いている。


 ユリの葉の茂みから柄の先に花だけが
 見えている。濃いきれいな花だ。

 もう時期はずれではないのか。ふと思
 ったがコスミレには言わずにおく。



残波岬のテッポユリ(2)


 アゲハ蝶を撮ろうと思ったが難しかった。
 テッポウユリの花に蝶は止まらない。近く
 を飛んでいても止まるかに見えて、触れる
 か触れないかで素通りしていく。


 何故か蝶はユリが好きでないようだ。
    

 海を前にした蝶を見ていると、安西冬衛
 (あんざいふゆえ)のあの一行詩が思い
 浮かんでくる。


 てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った



 我々の蝶に海を渡る気はないらしい。海
 と反対のどこかへふんわりと風に乗って
 飛び去った。 
  


残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 
  起ち上がる風の百合あり草の中
 
                (松本たかし)



 崖下の岩場へは釣り人たちが踏み固
 めた小径がある。崖の岩壁を下るの
 は初めてだとかなり慎重になる。




残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)


 周りに人影はない。背をかがめテッポウ
 の花先に鼻を突き出し、子どもように匂
 いをかぐ。

 鼻先に黄色い花粉がついた。



残波岬のテッポユリ(2)


 野に咲くテッポウユリの花には純朴さを
 感じる。




 
 もう一つの場所。西の岩場

 もう一カ所海を眺めて咲いているテッポウユリ
 の花が撮れる場所がある。
 灯台の西側。そこの岩場に別の日に行った。


 駐車場の側のモクマオウ林の中にある釣り人
 がよく利用する小径を行く。初めてだと入口は
 わかりにくい。  



残波岬のテッポユリ(2)


 灯台の西側の岩場。ザンパビーチも望め
 る岩場。上は底の厚い運動靴か登山靴で
 ないと歩きづらい。




残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)


 岩場に上がって撮る。
 岩場はごつごつとしており雑木も茂って
 いて足場はとても悪い。 




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 ユリの花の左の空からツバメがいき
 なり飛び込んできた。
 


残波岬のテッポユリ(2)


 ツバメの周回してくる経路を確認。撮れ
 そうな場所でツバメを待った。

 素早い飛行で鮮明に撮るのは素人の自
 分には何度撮っても難しい。



残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 ほんとに楽しそうにすいすいと風を切っ
 て飛び回っている。

 餌を捕るのに大げさな飛び方だと思わ
 ないでもないが、爽快に旋回する姿は
 じつに胸がすく。羨ましい。


 一日はつばめとなって、あのようにこの
 空を自由に飛んでいたいと思う。

 

残波岬のテッポユリ(2)


 ツバメを撮っている岩場にふいに老人と
 その孫らしき二人がやってきた。海の様
 子を見に来たようだ。


 通りすがりに老人がぽつりと「すぐそこに
 ハート岩があるよ」とつぶやくように教え
 てくれた。


 近くの岩場にハシゴが架けられていて楽
 に下りられる場所がある。

 波に浸食された岩が左右から突出てい
 て見る角度によってハートの形になって
 見えた。 
 

 この場所は何回か海から岩場に上がる
 のに通ったりした知っている場所だが、
 ハート型に見えるとは気付かなかった。


 なお、左右の岩は前後しており一続きの
 岩ではない。


 ハシゴは数年前はなかった。観光客がく
 る場所ではない。一般の人でももちろん
 くる場所ではない。

 ハート岩とは、ごく新しく誰かが言い始め
 それが呼称となって口コミで広がったの
 だろう。 


 引潮時にはハート型をバックに記念写真
 が撮れる。





 青空の日の残波


 比較的青空の見えた日の残波岬。
 雲を期待して行ったが思う場所の空に思
 い描いた雲は出ていなかった。

 しかし、グラジオラスやヒルサキツキミソウ
 がとても咲いていた。



残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 ヒルサキツキミソウがきれいに咲いて風に
 花を揺らしている。


 腹ばいになって何枚か撮る。


 今年は、特にビーチ側の芝生の休憩所の
 あるエリアではヒルサキツキミソウは満開で
 咲き乱れていた。


 
残波岬のテッポユリ(2)


 グラジオラスが咲いている左手前には、例
 年テッポウユリが咲くのだが、どうしたのか
 今年は見かけなかった。

 ツバメが画面に飛び込んできた。



  病み明けの空の広さよつばくらめ

                (芳澤史子)



 この場所は好きな場所。グラジオラスや
 ユリの花が咲く時期には必ずここをのぞく。
 灯台と断崖と花が一緒に撮れる。

 運が良ければ夕陽もそれに追加できる
 と思うが、まだ撮ったことはない。
 夕陽と灯台をいい絵で撮れる場所が多
 いのでここのことはすっかり忘れてしまう。
 


 
残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 棒の柵とグラジオラスの赤い花の
 茎を平行に並べて縦構図にした。
 
 綠と赤の強い補色の組み合わせに、
 空の青と雲の白がいいバランスにな
 ったように思う。 



残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 近寄ってきた際に撮った画面を見せ
 了解を得る。

 「ノー・プロブレム」が聞けたときは嬉
 しい。



残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)





残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 風の通り道になっている草むら。
 同じ方向に倒れたカヤの中にぽつんと
 テッポウユリの花の白。





 夕陽を撮る

 
 母の日。西空に霞が多かったのでいい
 夕陽が撮れるかも知れないと思った。



残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)

 
 この日もっとも撮りたいと思った絵。
 灯台の天頂に夕陽がくる構図で撮れ
 る場所を見つけるのに苦労。

 探しているうちにも夕陽は静かに落ち
 ていく。岩場で身体を傾け不安定な状
 態で撮る。

 間一髪間に合った。
  

 カメラはシーンモード(夕焼け)で設定。
 「A」モードでは調整が夕陽に追いつけ
 ずチャンスを逃してしまうため。




残波岬のテッポユリ(2)



 夕陽の沈むのに合わせて断崖の上を
 落ち着きなく移動しながらイメージに
 合う絵を探した。


 ごつごつした琉球石灰岩の断崖の上
 の移動は慣れないと危険だ。
   

 断崖の上に一晩釣りをするという方が
 いた。「邪魔になってないですか」とこち
 らに逆に気を使っている。申し訳ない。


 釣り人のシルエットを検討したが灯台と
 岩の陰になりいいシルエットはできない
 ので諦めた。



残波岬のテッポユリ(2)


 背をぐっと低くかがめ、岩場の岩のつく
 る影を遠い山脈の稜線にイメージして
 撮る。

 
 撮る位置を変えればいろいろと広い
 光景の絵がつくれる。



残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)


 テッポウユリのことを思い出した。
 あわてて断崖の方からユリの丘へ駆け
 つけて撮る。
 間に合う。今日はほんとに良い日。
 

 暗くなり始めた。人影も少なくなり辺り
 はやがて静寂に包まれる。

 灯台の青白い灯が回転し時々光が現
 れる。テッポウユリの岬に別れの時刻
 が来た。


 咲いた花は、人間がぐっすり寝ている
 夜も咲き続け数日で生を終える。


   鉄砲百合立ったままなり昼も夜も

               (宮城正勝)



 次ぎ訪れたときなじみの花たちは朽ち
 ているかも知れない。






   おわかれするときに   
               
             (詩:堀江菜穂子)   


   おわかれするときには
   さよならって みんないう
   
   わたしはくちがきけないから 
   いつもだれにも
   さよならはいわない

   さよならってことば
   いえなくてよかった

   わたしはだれともまだ
   さよならをしていない

   

     
     堀江菜穂子詩集『いきていてこそ』
     (サンマーク出版、2017)より 
       
                     
 堀江菜穂子(1994年~)は
 [脳性まひとたたかう”声なき詩人”」
 とも言われる。   




残波岬のテッポユリ(2)


 観光客のシルエットで絵をつくる。
 いい配列の動きになるのを待った。





 残波岬以外で


 残波岬以外でも海を眺めて咲くテッポ
 ユリを探してみた。



残波岬のテッポユリ(2)

 
 今帰仁村。福木の路地が風情のある
 今泊集落の海岸。

 蘇鉄の陰の崖の中腹にテッポウユリ
 が咲いていた。



残波岬のテッポユリ(2)


 海岸沿いの墓前に咲いていた。
 


 ここで一枚だけ道草。


残波岬のテッポユリ(2)


 今泊集落には福木になった雌のオーム
 がいる。

 もうかなりの大木になっている。
 空を気ままに飛ぶ自由は失ったが福木
 になって長い寿命を生きているようだ。
 表情は幸せのように見える。

 別のことも思う。
 福木の木がオームになりたかった。
 例えつかの間の生であっても自由
 に大空を飛びたいと。その思いの
 強さが。


 福木は備瀬集落が有名だが、今泊の
 福木並木も実にいい。福木の空の雲
 が一緒に撮れいい絵ができる。




残波岬のテッポユリ(2)

 
 真栄田岬夕陽の丘。
 テッポウユリはとても少なかった。
 

 海を組み込んで構図をつくっていると
 釣り人がたまたまやってきた。通り過
 ぎないうちにあわててシャッターを押
 す。逆光に輝く海は白トビ。
 


残波岬のテッポユリ(2)

 うるま市浜比嘉島。浜漁港右手に
 ある海神の拝所のある岩山で。



残波岬のテッポユリ(2)

 
 勝連半島東海岸の海の中の岩の上に
 一輪咲いていた。

 岩全体を撮ると小さなユリの花は分か
 らなくなるので諦めて一部分を切り取
 った。



残波岬のテッポユリ(2)

 県総合運動公園前の海岸。いるか島。

 
 意外なところにユリの白い花が風に吹
 かれ揺れているのが見えた。
 見つけた時は嬉しかった。空には白雲
 が広がっている。


 撮った後は自然とガッツポーズになる。




残波岬のテッポユリ(2)


 岩の根の方から人影の去るのを待って
 縦構図にした。


 この風景、夕映えはどのような色で撮
 れるのだろうか。

 天気のいい日の夕刻があるなら来てみ
 たい。その時までテッポユリには咲いて
 いて欲しい・・・。

 

残波岬のテッポユリ(2)




残波岬のテッポユリ(2)



 糸満市荒崎。自生のテッポウユリが多い。
 イノーには白浪が立つので、きっともっと
 いい絵が撮れるだろう。
 

 なお、荒崎には「ひめゆり学徒散華の跡地」
 の碑文のある岩場がある。




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Posted by 流れる雲 at 23:00│Comments(0)風景
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