残波の波(13)

流れる雲

2019年05月24日 19:20


 残波岬。展望所の東側の断崖下は引潮時に
 素晴らしい波の絵が撮れる。






 風は北あるいは北西。次から次へと
 断崖下に波が打ち寄せている。
 風の方角に強さ。波の高さもいい。

 
 構図を探し撮る。

 断崖の淵の岩に片足または両足を固
 定。あるいは腹ばいになり顔を淵から
 乗り出して身体を固定。

 この場所は、断崖から落ちないように
 他の場所よりも特に慎重に撮りやすい
 姿勢をつくる。











 少し離れた小さな岩の周りを泡沫が
 渦巻く。 











 
 詩人はあたりに満ちあふれる波の
 ことばを感じとれという。

 むつかしい。

 ことばで感じ取ることができるなら
 詩人になれるだろう。




    海辺にて 
              (詩:長田 弘)
               

 いちばん遠いものが
 いちばん近くに感じられる。
 どこにもないはずのものが、
 すぐそばにいるような気配がする。
 どこにも人影がない。それなのに
 到るところに、ことばが溢れてる。

 空には空のことば。雲には
 雲のことば。水には水のことば。
 砂には砂のことば。石には石のことば。 
 草には草のことば。貝殻には
 貝殻のことば。漂流物には
 漂流物のことば。影には影のことば。
 椰子の木には椰子の木のことば。

 風には風のことば。波には
 波のことば。水平線には
 水平線のことば。目に見える
 すべては、世界のことばだ。
 すべてのことばのうちの、
 すべてのことばは、ほんの一部にすぎない
 風は巻いて椰子の木がいっせいに叫んだ。

 悲しむ人よ、塵に口をつけよ。
 望みが見いだせるかも知れない。
 人の悲しみを重荷にしてはいけない。
   


 ※ 長田弘 詩集『人はかって樹だった』所収。
   詩の4カ所で、読み易いよう引用者が便
   宜上行間をあけた。

    





 西日の残波岬灯台。断崖の陰。






 
 灯台西側。湾曲した岩場の夕刻。
 潮が満ち波が岸を打つ。





















 
 イソヒヨドリがふいっとどこからともなく
 飛んで来て、岩の上に休んだ。
 逆光に鳥影が浮ぶ。


 背景に白波が起つのを待ってシャッタ
 ーを押す。






















 ふと横を向くと、すぐ近くで観光客らしい
 年配の男性も同じ方向の波飛沫を撮っ
 ていた。


 岩の上にカメラを固定し、熱心に撮って
 いた。きっといい絵が撮れたことだろう。




 夕陽を撮る


 夕陽がかなり落ちてきた。あたりが夕暮
 色になってくる。

 場所を移動し、夕陽と波飛沫の構図をつ
 くる。いい夕陽が撮れそうだ。


















 狙っていた波飛沫が舞う。

 これ以上の波はもう来ないだろう。
 やっと帰れる。






 駐車場への戻る途中。空に満月。
 ちょうど前をいく車のバックライト
 が赤く光った。
 偶然出くわしたいい光景だった。


 家路へ。戻る時間はかなり遅くなる。



    
     ささげる詩      
            (詩:シュトルム)

   道はなんととおいことか。けれども
   わが家でやすめば 元気になれる!
   そして 夕暮と夜とのあいだに
   愛するひとよ 君がいる!

              
 ※ 掲載したのは「ささげる詩」の一部  

 


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