2019年05月02日 18:00
若夏の残波岬。今、テッポウユリがほぼ満開。
ひろい野辺に自生のテッポウユリが多く咲い
ている光景は他では見られない。
今年は特によく咲いている。
霞が多く空模様はいまひとつスカッとしない
日が続いているが、雨さえなければ風は爽
やかで太陽は穏やか。散策するには上々。
野鳥の小鳥も多い。
イソヒヨドリ、シロガシラに渡りのツバメなど。
藪の中からはウグイスの爽やかな鳴声が
よく聞える。姿は見えない。
蕾もまだかなり見られるが、数日ですぐに
咲く。この先一週間の天気予報を考えると、
ここ2~3日が訪れ時期かも知れない。
娘さんに押されてやってきた車椅子の老齢
の女性。車いすに座るちょうど目の高さに
大きなユリの花。
するとすくっと車椅子から立ちあがった
(ように見えた)。
娘さんがすぐに手を添える。ユリの花に近
寄ると、腰をかがめ花に触れしばし香りを
かいでいた。
・・・そしてスマホの記念写真。
ユリの花が元気を与えてくれたようだ。
「車椅子、もういらないんじゃないですか」
と冗談をいうと、笑っていた。
断崖側と舗装された散策路の間の土手の上
(断崖側)からだとユリが群生して咲く光景が
広く見渡せる。
グラジオラスの赤い花がアクセントになる。
断崖近くの岩場や原に丈低く咲いている
ユリは野生味があり惹かれる。
沖縄の歳事記などからテッポウユリを詠
んだ句をいくつか拾ってみた。
鉄砲という名哀しき百合群生
(下田慶子)
歩をとどめしばらく百合の香にゐたり
(神元翠峰)
断崖に海の日集む鉄砲百合
(渡口澄江)
紺碧の凪の海。
断崖の下を覗く。
海底の岩の面がさざ波によって美しい
紋様となって浮び揺れ動いている。
ハマボッスの花も、ユリに負けずとても
咲いている。
さいている
花をみよ
こうしていられぬと思え
※
花をみること
それもまた
一つの仕事であることが解ったら
花をみて
その一生とするもよかろう
※
花はおそろしい
ほんとうにおそろしい
なんという真剣さであろう
だが、またそれは
あまりの自(おのずか)らさである
(山村暮鳥 詩「朝顔」より)
風は弱い。断崖の近くを下から吹き上がる
風に流されずモンシロチョウが飛んでいる。
絶景かな!
展望台の上から。
手前は展望台の擁壁の縁石。
紺碧の海原に観光ダイビングらしきの船が
一艘見えた。
素晴らしいいい光景に出会った。
ズームアップしもっとも絵になる光景に
切取る。
このような光景に出会えるとは実に今日
はいい日だと心が嬉しく思う。
遠くは北部の灰色の山脈。
ここは岬の東の端っこのほう。釣り人
以外にあまり訪れる人はいない。快晴
の日には恩納村あたりから本部半島
までいい眺めになる。
風景は何も語ることをしない。
ひとの思いの行く末を、
じっと黙って抱いているだけだ。
(長田弘詩集『ひとはかって樹だった』より)
細い枝先でしきりにさえずっていた。
春の岬の四方を飛び回り恋の相手を求
めているようなようす。
グラジオラスはテッポウユリよりも咲くの
は早い。
茶褐色に朽ちた花や散ってしまったもの
も見られるが、まだまだ咲き続けている。
今年はともかく花が良く咲いている。赤い
だけにやけに目立つ。
岩場のなかに赤いグラジオラスの花が
立ちひときわ目立っていた。
断崖の方にいた船が遠くに見える。
もう港に帰るのだろう。そんな時刻に
なろうとする。夕日は今日の天気では
見れない。
イワサキクサゼミだそうだ。
灯台近くの叢で小学生の男の子が捕
まえて見せてくれた。15センチほどの
小さな蝉だった。たくさんいた。
男の子の父親が「鳴き声が聞こえている」
と教える。
耳をすますと、耳鳴りのようにジージー
ジーと低く続く音が辺りの叢から聞えて
くる。
ずっと鳴き続けているのだが、不思議
と意識して聞かないとまったく聞えない。
草蟬の声の間遠に卓爾の忌
(永田米城)
今年の残波岬の若夏はほんとにいい。
灯台に架かる電線の上や辺りの空に
ツバメが4~5匹飛び交っているのを
眺めながら帰る。