残波岬~それぞれの想い

流れる雲

2018年11月27日 18:00




 ある日の残波岬。美しい雲がたなびいている。
 赤い服に白い日傘の女性が灯台の方へ1人歩いて行く。

 素晴らしい雲を大きく入れ広い風景に女性を配置し灯台を
 撮った。
 






 琉球石灰岩の大きな岩塊が幾つも崩れ落ちた窪みに下りる。
 巻雲を背景に構図を手前の岩塊や岩陰で変えながら灯台を撮る。
 





 
 岩間から灯台を覗くように撮る。手前の崖の黒い陰が画面を
 引き締める。 












  
 岩の斜面で1人の男性が海を眺めていた。  







 広角側で広く取ろうとすると構図によっては灯台が傾く。そう
 気にはならない。水平線が傾かなければいい。







 岩陰の間から釣り人の影が見えた。座していた釣り人が立
 ち上がるのを待って右下に配した。






  
 岩の上でじっと海を眺める男。釣り糸を海に垂れている男。
 海に向かい合うそれぞれの想いは、孤独と緩やかに流れる
 静寂のなかで一つに重なるものもあるだろうか。



 最初に見かけた日傘の女性はどうしているのだろうか。
 どのような想いで1人残波岬に来たのだろう。やはりを海を
 眺めているのだろうか・・・。過去を忘れるために海辺に来
 る旅もあるだろう。思い出してふと気になった。


 凪で海は碧く静かだ。雲は北の水平線へ伸びている。






 
 雲や灯台にカメラを向け写真を撮るのも孤独な行為。だが、
 目や頭は絶えず被写体を探し狙い自然を構図で切り取って
 いる。束の間、想いにふけることはあるが熱い行為の連続。







 思い直して先ほどの海原を見つめる男性をもう一度撮る。詩情の
 ある絵にしたかった。




   
     海に降りそそぐ太陽の抱擁は
     惜しみなく光徹り
     小暗き意識の点綴に合流する
     この時

    
     天恵に乾いた心の壁に
     静かに滲(し)み徹り
     陥没した休日の残りを
     彩りゆく


     そう
     必ずしも望みなきにあらず
     やさしく私を抱きしめ
     天は素晴らしく青いのだ
  
     そして海はーー



                 詩:大城吉秀 「休日の海」(抄)
         詩集『彷徨の海・空は青み』(根元書房)より 
     
     ※原詩に行間はない。読み易くするため引用者が
       設けた。「徹」の漢字は原詩のママ。




 夕陽が沈むのを・・かなりじっと待つことはあるが、一日の移
 ろいをただ座して眺め待つことには耐えられない。魚の気ま
 ぐれに時間をゆだね、釣り糸を垂れてただ待つことには耐え
 られない。

 
 静かな時のなかで独り待つことも喜びに満ちた一つのりっぱ
 な活動であるというが・・・。残波岬を訪れる想いは、波やそし
 て雲のある風景を撮ること。
 
 待つのは高く舞い上がる素晴らしい波飛沫、美しくたなびい
 た白雲や夕焼け。もっぱら目的的だ。


 もっと老いて身体が思うように動かなくなれば、心が我執を離
 れる老いがあるとすれば想いは変わり、ぼんやりと待つことが
 できるだろうか?
 






 年に数回ほど素晴らしく広がった巻雲や巨大な積雲が岬の空
 に横たわることがある。出くわしたらそれは天の贈り物だ。







 雲が変わらぬ間にいろいろな場所やアングルから雲を構図の
 主役に狙う。常に主役の灯台も雲の引き立て役になる。






 
 ハマオモトの花が咲いていた。低いアングルから灯台とハマオモト
 を一緒に撮りたかった。ハマオモトの花を空に浮かびあがらせたか
 ったが、そうすると灯台も全く見えなくなってしまうので無理だった。 

 なお、ハマオモトはひがんばな科。花の形は彼岸花にやや似てい
 る。


 余談になるが、残波岬は季節によって、ツワブキ、テッポウユリ、
 やグラジオラスあるいはヒルサキツキミソウの花、ススキの穂な
 どと灯台を一緒に撮ることができる。














 
 日が沈み一日が終わろうとする。
 どのような想いを持とうと一日は誰にも同じ時の長さ。等しく
 尽きる。








 拝所の上に満月が昇った。




     この万象の海ほど不思議なものはない。
     誰ひとりそのみなもとをつきとめた人はない。
     あてずっぽうにめいめい勝手なことは言ったが、
     真相は明らかにすることは誰にも出来ない。


              
    一滴の水だったものは海に注ぐ。
    一握の塵(ちり)だったものは土にかえる。
    この世に来てまた立ち去るお前の姿は
    一匹の蠅(はえ) ーー風とともに来て風とともに去る。


  
    時はお前のために花の装(よそお)いをこらしているのに、
    道学者の言うことなどに耳を傾けるものではない。
    この野辺(のべ)を人はかぎりなく通って行く、
    摘むべき花は早く摘むがよい、身を摘まれぬうちに。
   


         オマル・ハイヤーム作『ルバイヤート(四行詩)』
      (第8歌、第41歌、第45歌,小川亮作訳、岩波文庫)





関連記事