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2019年02月26日

フォト俳句(3)焚火

フォト俳句(3)焚火



    夕焼うつくし今日一日はつつましく
                              (山頭火)



  波の音も静まり夕焼が広がった残波岬。


  実に美しい夕焼だった。 
  夕焼けに夢中になり最初気づかなかったが、夕焼雲
  の彼方上にひっそりと細い月が小さくうかんでいた。
  画面の左上。縁近くに写っている小さな白いものがそ
  の月。
  
 
  ホントに小さな三日月を確認したあと、あらためて写
  真を見直すと最初の風景がちがって見える。
  月が出ていると分かると空が広く深くなるから心は不
  思議だ。


 

フォト俳句(3)焚火



    ふるさと遠く一日海を眺める


 
  防波堤の上に人影を映し静かに落ちていく夕日。 
  水平線の彼方には故郷ケラマの島影がぼんやり
  と見える。


  故郷が浮ぶ海を見ると、唱歌「故郷(ふるさと)」の
  節が心に浮かび自然とくちずさんでいることもある。
  帰らぬなつかしく遠い日。亡くなった同級生のこと
  も思い出され涙が出てくる。


    島の友またひとり去る海見に行く    



  写真の場所は宜野湾港マリーナ。トロピカルビーチ
  も近くにあり防波堤上に人をよく見かける。休日に
  は釣り人も訪れる。


  そして、夕日が防波堤の彼方に沈むとき防波堤上
  の人々が絵のようなシルエットになる。




フォト俳句(3)焚火
 

  丸い夕陽の中に防波堤の人影を入れた絵を撮るこ
  とも可能だろう。

  だが、この日はあいにく水平線上に雲があった。
  あるいはと期待しつつ待ったが、無情な雲のうしろに
  夕日は沈んでいった。





フォト俳句(3)焚火




   掃きよせて焚くけむりの朝のひろびろ
                
                            (山頭火) 



 
  木に囲まれた屋敷の庭で落葉を掃き集め燃やして
  いた。小さな暖かそうな炎。くすぶる落葉の中から
  灰色の煙が立ち上がっている。

  煙の匂いが懐かしい。嬉しくなる。


  火の主の方が落葉をさらに被せると、しばらく火は
  くすぶり煙もその匂いも濃くなって風にたなびく。



    
    
フォト俳句(3)焚火


 
  集落のメイン道路から脇道に入り歩いていると、焚
  火の煙の匂いが風に乗って漂っていた。
  「たきびだ たきびだ 落葉たき・・・」と、匂いの来る
  方へ向かう。屋敷跡で焚火をしていた。


  畑の広がる野辺の方から屋敷を囲む木の間を抜け
  て風が吹き寄せてくる。


  風の度に煙は大きく上下に揺れ動き舞い形を変え
  る。その光景に惹かれる。カメラを向け続けた。



フォト俳句(3)焚火


  焚火の守の男性がやってきた。

  「法律があることは分かっているのだが・・・」と話
  しながら、手前の木に立てかけた熊手やちりとり
  の道具をどかそうとする。

  
  「前もグループで来た方々が懐かしいと写真に撮
  っていましたよ」と教えてくれる。
  このような昔懐かしい光景を見ると、年配の写真
  好きななら誰が撮らずにいられるだろうか。おそ
  らくいないだろう。  


  熊手などをどかそうとしたのは、写真を撮る邪魔
  にならないようにという心づかいだった。
  焚火の雰囲気が出るのでそのままにして欲しいと  
  頼んだ。




フォト俳句(3)焚火


  風の調子が変わったようだ。煙の上り下がりの動
  きが大きくなり生き物のように身をくねらせる。




フォト俳句(3)焚火



  
   焚火の穂こころの如く定まらず

                      (山口誓子)      


 

フォト俳句(3)焚火



   焚火ただ見つめてをりて一句なし

                           (山口青邨)




  ふたたび穏やかになり横になびく。
  そして風を待つ。こうして山口青邨(せいそん)と
  違い、風に舞う煙を楽しく何枚か撮った。


  赤く燃え立つ絵も撮りたかったが、炎はずっと見
  えず、火の子もまったくなく煙だけが出ていた。

  落葉の量は多い。小分けにし時間をかけて燃や
  している。風もあり火の用心への火主の配慮な
  のだろう。



  脇道があれば迷わずその道に入れ。いい被写体
  に出合えるだろう。とある本に書いてあった。
  ・・・焚火に出合い焚火を撮りその言葉を思い出す。




フォト俳句(3)焚火


  離島の集落内の空き地。昼下がり二人の男性が
  火の守をしながら雑談をしていた。焚火の前では
  話す言葉もあたたまるだろう。


  
  ・・・・ ところで、次のような句もある。

    
    捨てし身や焚火にかざす裏表  (川端茅舎) 



  黙って焚火を前に、じっと見つめているといろい
  な思いもわいてくる。  


    焚火して年の行方を見てをりぬ (森 澄雄)




フォト俳句(3)焚火


     
    大焚火見よ見よ背のいとし子に

                         (山口誓子)    



  山口誓子に焚火の句は多い。
  焚火が好きだったのだろうか。




フォト俳句(3)焚火



  
   焚火あたたかく風さわぐ   (山頭火)            
                           




フォト俳句(3)焚火


  

   焚火のけむりほのぼののぼる畑かな

                            (山口誓子)

                   


  場所はヤンバル。老齢の夫婦が畑の枯れ草を燃
  やしていた。故郷でも昔は畑で日常に見られたの
  で実に懐かしい田舎の光景だった。



    幼くて見しふる里の春の野の
       忘れられかねて野火は見るなり 

                  (若山牧水)


  幼い頃、仲間と畑から芋を掘り出して盗み、洗って
  生のまま食べたり、焚火で焼き芋にして腹を満たし
  た。火の中にそのまま突っ込んで焼く。皮の焦げで
  手や口が黒くなった。


  食べるために山を歩き海を歩き遊んだ思い出が
  絵のように蘇る。
  



 



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Posted by 流れる雲 at 02:00│Comments(0)詩・歌・俳句
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