てぃーだブログ › カメラと沖縄を歩く ›  › 詩・歌・俳句 › プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

2018年03月24日

プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   フランスの代表的な詩人のひとりであるプレヴェールに「鳥の肖像を描くために」と
   いう詩がある。
   2月の桜の頃に撮ったメジロの写真をプレヴェールの詩とのコラボにした。

 

プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」



          鳥の肖像を描くために
                               詩:プレヴェール


        まず鳥かごをひとつ描くこと
        ただし戸はあけておく

        それから次に
        何か綺麗な  
        なにか簡単な  
        何か美しい
        何か役に立つ
        鳥にそう見えるものを描く
        
        さてカンヴァスを木に立てかける
        庭でも
        林でも
        森の中でもいい      
        その木のうしろに身をかくす
        何も言わず
        じっと動かず・・・・・



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」



        鳥はすぐ来ることもあるが
        何年も何年もかけたあげくに
        やっとその気になることもある
        がっかりせずに
        待つことさ
        必要なら何年でも待つ
    
        鳥がすぐさまやって来るか
        ゆっくり来るかは
        絵の出来ばえに関係ないんだ



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」


  
        いよいよ鳥がやって来たら
        もし来たら
        あくまで息をひそめて  
        鳥が籠に入るまで待つ
        入ったらそっと戸をしめる
 
        籠の棒を一本一本消していく 
        鳥の羽根には絶対にさわらぬように気をつけて
        
        さて次に木の肖像にとりかかる
        枝も一番美しいのを選んでやるんだ
        鳥のためにさ
 
        さらに描き足す 緑の葉むら さわやかな風
        舞い散る日ざし  
        夏の暑さの中で草にひそむ虫の音など
   
        そうして鳥が歌う気になるまで待つんだ



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」


        もし鳥が歌わなかったら 
        よくないしるし
        絵がよくないしるしだが
        歌ってくれればしめたもの
        名をしるしてもいいしるし

        そこであなたはそっと  
        鳥の羽根を一枚ぬいて
        絵のすみっこにあなたの名前を書くというわけ。


               (安藤元雄訳。岩波文庫『フランス名詩選』より)




    ジャック・プレヴェール(1900年2月4日~1977年4月11日)
    家が貧しく学業を中断してさまざまな肉体労働に就いた。25歳頃から超現実主
    義(シュルレアリスム)の詩人たちと交流し詩作を始める。戯曲や映画シナリオ、
    児童のための童話も書いている。

    「鳥の肖像を描くためには」は詩集『ことば』(1945)所収。プレヴェールの本の
    挿絵などを描いた女流画家の展覧会へ寄せて詠んだ詩という。

    岩波文庫『フランス名詩選』ではプレヴェールは次のように紹介されている。
    「・・・圧制者への反発と民衆への愛を基底とする詩や台本を書く。〈枯葉〉などの
    シャンソンの歌詞や映画〈悪魔が夜来る〉〈天井桟敷の人々〉等のシナリオも手が
    け、詩も、第2次大戦後に出した詩集『ことば』以降、圧倒的な数の読者に支持さ
    れた」
    

    「プレヴェールにとっての鳥は自由の象徴である」と訳者脚注に書いてある。
    それはそれで脇に置き、読む者が自らの人生や想いにてらした「鳥」のイメージ
    でこの詩を解釈することもゆるされるだろう。
 

プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」
 


   
   嶋岡 晨 訳『プレヴェール 愛の詩集』(飯塚書店)には次の詩がのっている。
   鳥が自由の象徴というのがきわめて分かりやすい詩。


             自由地区
           
         鳥かごのなかに軍帽を置いた   
         頭には鳥をのっけて外へ出た
         そうするとおまえ
         と司令官がきいた  
         もう敬礼はしないのか

         はッ
         と鳥がこたえた
         もう敬礼はしないんであります

         ほう そうかね
         と司令官は言った
         失敬した 敬礼はすると思ったからな

         どういたしまして 誰にでも思いちがいはありますよ
         と鳥は言った。
     
    

 

プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

 
    
   次の詩もある。


         人生が鳥籠であるとき
         日日は涙
         人生が森であるとき
         日日は木
         人生が木であるとき
         日日は枝
         人生が枝であるとき
         日日は葉っぱだ

         人生が海であるとき
         日日は波
         波波は 嘆き  
         歌みぶるい

         人生が賭けであるとき 
         日日はカード
         


   上の詩はプレヴェールの詩「人生が・・・」の一部。嶋岡 晨訳。 



               
プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」




プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」



   エディット・ピアフが唄うシャンソン「枯葉」はコスマがプレヴェールの詩に
   曲をつけたもの。



           枯 葉 

       思い出しておくれ ともに幸せにすごした日々を
       あのころ 太陽はもっと熱く燃え
       人生はずっと美しかった

       枯葉がシャベルでかき集められている 
       ぼくには忘れられなかったよ・・・・
       思い出も悔いも一緒に
       そして北風がそれらを運び去る
       忘却の寒い夜のかなたへ
       
       ぼくには忘れられなかったよ
       きみが歌ってくれたあの歌
       それはぼくらの心そのままの歌

       きみはぼくを愛しぼくはきみを愛し
       ふたりはいつもいっしょに暮らした
       ぼくを愛したきみ きみを愛したぼく

       けれど人生はひそかに音もなく
       愛しあう者たちを引き離す
       そして別れていく恋人たちの 砂に残る足跡を波は消す。
     
       
  


プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」
  

   
  
プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   春だ。愛しあうメジロたちかどうかはわからない。ケンカ争いのように思えた。
   二羽はからんで騒ぎすぐに別れ別れになった。

  
    
プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   カメラを向けていたらメジロと目と目があった。
   何をしているのだと言いたげに首をかしげていたが上の枝に飛び去った。


   自由な鳥たちが桜の花々の間を飛び交う。人の気配には敏感。近づくと反対側の
   枝の花陰や上の枝に遠ざかる。あるいは他の木に飛び去る。日がな一日時間をか
   けてもきちんとしたいい姿を撮るのはなかなか難しい。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」



   幸い沖縄市の中央公民館のある公園にはメジロを撮るのに最適な桜の木が
   あった。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   これがその桜の木。第2駐車場横の数本の桜のうちのひとつ。

   この桜は、3~4メートルほど離れて撮ることができるのでメジロに警戒されない。
   桜の木を見下ろすように駐車場の位置から撮れる。狙った枝にメジロが来れば
   しめたもの。来るまで釣り人やバードウォチャーのようにのんびりと待てばよい。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   
   
  寄り道をしてメジロたちが縄張りとしている桜たちを見る。
  今年は花の付きが少ない。
 


プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   この桜の形が好きだ。今年の花は少ないが花が多い年にはとてもいい絵になる。
   1メートルをちょっと超えるだけの高さ。公園に来るとこの桜に足は自然に向く。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   この場所を撮るのを見ていたのか、「私も撮ったんですよ。いいですよね」と公園
   の管理作業で休憩中の方に声かけられた。カメラのことについてもいろいろ話か
   けてきた。カメラが好きなようだった。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

  後方の桜も毎年気になりまわって見る。やはり花が少ない。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」




プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   左は中央公民館。    



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

   ガジュマルの根が張りだした下方に桜の並木。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」



  桜の花は散り実を結ぶ。数年前に同公園で熟したサクランボを撮った。
  今年のサクランボはどうだろうか。そろそろ気になる。

  写真関係の3月号の月刊誌は毎年桜の特集。沖縄に住んでいる者には
  うらやましい限りの桜の写真が誌面を彩っている。
  しかし・・・「ここがロドスだ。ここで飛べ!」とギリシャのことわざにある。



プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」


 

  プレヴェールの詩に「三月の太陽」がある。その一フレーズを引用し最後にする。


         人生はすてき
         とあなたに告げて死ぬわね
         と花は告げ
         死んでしまう

         その花には答えず  
         男は庭をよこぎる
         男は森をよこぎる
         犬にもまるっきり声をかけずに

                 (嶋岡 晨 訳)


  
  落ちた鳥の羽根を一枚拾って書く。プレヴェールの詩はやはり「いいね!」。
  
  

プレヴェールの詩「鳥の肖像をえがくために」

    
    






同じカテゴリー()の記事
イソヒヨドリ
イソヒヨドリ(2019-06-04 17:00)

島の雀
島の雀(2017-11-30 17:00)

ツバメがやってきた
ツバメがやってきた(2017-09-22 11:00)

ツバメが撮れた
ツバメが撮れた(2016-10-16 23:00)


Posted by 流れる雲 at 04:00│Comments(0)詩・歌・俳句
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。