西条八十の詩「蝶」

流れる雲

2017年01月19日 23:20

  
                                              クロマダラソテツシジミ



                   蝶             
                                      西條八十(『美しき喪失』)
           
           やがて地獄へ下るとき、
       そこに待っている父母(ちちはは)や
       友人に私は何を持って行かう。

       たぶん私は懐(ふところ)から
       蒼白(あおざ)め、破れた
       蝶の死骸をとり出すだろう。
       さうして渡しながら言ふだろう。
   
       一生を
       子供のやうに、さみしく
       これを追ってゐました、と。





        
          
                






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